最近、SNSで流れてくるCMや投稿を見て「なんか、やたら明るいな…?」と感じたことはありませんか?ポップな色づかい、やさしい言葉づかい、楽しげなBGM…まるで、こちらの気分を無理やりでも持ち上げようとしてくるような雰囲気。

あっ、たとえば「そのままのあなたで大丈夫」ってメッセージとか、「今日も自分をほめてあげよう」って動画のナレーションとか?

そうそう、まさにそういうやつ。それがね、ポジティブ・ブーストって呼ばれてる流れなんだよ。
このような“前向きで元気が出そうな演出”が、いま急増中なんです。そして、そうした流れを表すキーワードが「ポジティブ・ブースト」。
広告業界だけでなく、SNSや日常生活にもじわじわと広がりつつあるこの現象。今回は、この言葉の意味や背景、実例やちょっとした違和感まで、まるっと観察していきます。

ポジティブな演出っていいことじゃないの?なんでそれが話題になるの?

たしかに“前向き”って聞くと良いことに思えるよね。でも、なんでもかんでもポジティブを押し出されると、ちょっと違和感を覚える人もいるんだ。今日はそのあたりも含めて、じっくり観察していこうか。
ポジティブ・ブーストってなに?背景と意味をチェック
電通が提唱する「ポジティブ・ブースト」の概要
「ポジティブ・ブースト」という言葉は、広告代理店・電通が発表した『欲望トレンド2025』の中で登場したものです。意味としては、「世の中が不安なときこそ、あえてポジティブな感情を加速させるような演出や仕掛け」が求められているという考え方。
単に「明るい」ではなく、「意図して前向きな気分を与えるための演出」がポイントです。CMや商品パッケージ、SNS投稿など、あらゆる場面でこの“ブースト”がかかっています。
物価高や経済停滞など、ネガティブな情勢への反応としての消費心理
背景には、コロナ禍後の社会不安や、物価上昇、戦争、SNS疲れなど、さまざまな「ネガティブ要素」があります。そのなかで、企業や個人はあえて“やさしい雰囲気”や“前向きさ”を打ち出すことで、共感を得ようとしているのです。
たとえば「今日もいい日だった」とか、「無理せず行こう」といった言葉。こうした一言に、疲れた人たちが癒やしを求めているのかもしれません。
SNS・広告の現場に見る“やさしさ演出”の実例
ポップな色使い、やさしい言葉、ゆるフォントなどの視覚的要素
「ポジティブ・ブースト」は、まず見た目から。パステルカラーやあたたかい配色、手描き風フォントなど、やさしさを感じさせるビジュアルが多く使われます。
商品パッケージやバナー広告などにもこうした要素が取り入れられており、「見てるだけで気分が上がる」仕掛けになっているのです。
CMで流れる“元気BGM”や“おかえり演出”などの聴覚的要素と“やさしい押しつけ”
音の力も侮れません。テレビCMやYouTube広告で流れる元気なBGMや、「おかえり」「大丈夫」などやさしい言葉のナレーション。
こうした音によるやさしい押しつけも、ブースト要素の一つとして機能しています。

え〜っ、そんなところまで演出されてたの!? 全然気づかなかったよ〜!

うんうん、気づかせないくらい自然に仕込まれてるのが“上手な演出”ってことかもね。でも、知ってるとちょっと見え方が変わってくるでしょ?
気づかぬうちに心に届く、“やさしい世界”の日常例
「ポジティブ・ブースト」は広告やSNSだけじゃありません。私たちの日常の中にも、実はたくさん仕掛けられています。
たとえば、カフェのメニューに書かれた「自分にごほうびを」や、駅構内のポスターにある「今日もあなたはがんばってる」。こうした文言に、ふと励まされることはありませんか?
また、アプリ通知の文面が「お疲れさまです、今日もリマインドです」なんてやさしい口調になっているのも、まさにブースト系の演出です。
知らず知らずのうちに、私たちは“気持ちが軽くなる装置”に囲まれて生活しているのかもしれません。
なぜ今、「明るさ」が求められてるの?
どうして、こんなにも“やさしい言葉”や“前向きさ”があふれているのでしょうか? それは、現代社会の「疲れ」や「閉塞感」と関係しています。
物価の上昇、将来への不安、SNSでの炎上や誹謗中傷…。心がすり減るような話題が多い今、ポジティブなメッセージが心の保険として機能しているのです。
つまり、ポジティブ・ブーストは「ポジティブであること」自体が消費価値になっているとも言えます。希望や癒しが、今の時代における“贅沢品”なのかもしれませんね。
押しつけに感じる?ポジティブ・ブーストの“うざい”一面
もちろん、すべての人がこの「ポジティブな空気」に歓迎ムードというわけではありません。SNSでは「わざとらしい」「押しつけがましい」といった声も見られます。
「頑張らなくていい」ばかり言われても、かえってプレッシャーに感じてしまう…そんな意見も一定数あるようです。
ポジティブ・ブーストの“明るさ”は、裏を返せば“疲れた人たちを取り残す明るさ”にもなり得るのです。
次に来る?関連ワードもちょっとだけチェック
最後に、「ポジティブ・ブースト」と並んで注目されている関連ワードをいくつかご紹介。
- 自己肯定感コンテンツ(例:ゆるエッセイ漫画、やさしい言葉系YouTube)
- エモ消費(例:共感ストーリーや“泣ける広告”)
- やさしい世界(例:過度な主張をしない、空気重視の雰囲気)
どれも、時代のムードや価値観の変化を敏感にとらえたキーワードばかりです。
これらも「疲れた現代人」の気分に寄り添うスタイルとして、今後ますます広がっていきそうです。

たしかに…。ちょっとした言葉でも、救われることってあるもんね。

ポジティブって、誰かの心に静かに火を灯す力もあるんだよね。押しつけじゃなくて、寄り添う演出。そういうの、悪くないでしょ?